平成21年度 山形県高等学校社会科教育研究会 〈巡検の様子〉

 平成21年6月10日()

 

【巡検のルート】

 鳥海温泉「遊楽里」(9:30発) 〜 鳥海山大物忌神社吹浦口の宮(9:40-10:20)  

 

〜小山崎遺跡(10:30-11:00)  〜  丸池様(11:10-11:50)  〜 

 

昼食〈遊佐町内・冨士屋〉(12:00-12:45) 〜 旧青山本邸(13:00-14:00) 〜 

 

大阪有機化学工業株式会社(14:10-15:10) 〜 鳥海温泉「遊楽里」(15:30 )

 

 

@    鳥海山大物忌神社吹浦口の宮

秋田・山形両県にまたがる、標高2236mの鳥海山を神格化したものが「大物忌神」です。中世の神仏習合時代に、本地仏は薬師如来とされ、脇侍の日光菩薩・月光菩薩は、町内を流れる日向川・月光川が見立てられています。近世に入ると、山麓に修験集落が成立しますが、蕨岡・吹浦・矢島といった衆徒間での対立が表面化するようになります。

                  

 

 

 

 

 

 

 

遊佐町教育委員会の方に説明して頂きました。    大物忌神社吹浦口の宮本殿

 

 

さて、山形県と秋田県の県境は、鳥海山付近を見ると非常に直線的(人為的)です。まるで、アフリカの国境のようですが、これは、江戸時代に山頂の鳥海山権現堂の造営問題から、矢島藩と庄内藩の領境問題に発展したことが原因となっています。この時、鳥海山7合目以北が矢島藩という江戸幕府評定所の裁定が、現在の県境に反映されているということでした(廃藩置県以降もそのままになっていました)

 

A    牛渡川・丸池・小山崎遺跡

月光川の支流である牛渡川は、鳥海山からの豊かな伏流水が湧き水となって流れています。非常にきれいで透明度が高く、思わず手ですくって飲んでしまいました。また、それを証明するかのように、水中には「梅花藻」という、清流でしか育たない水生多年草が見られました。

 

 

 

 

 

 

 

 


  わかりにくいですが白く見えるのが「梅花藻」  川の所々から水が湧き出ていました。

 

牛渡川のすぐ近くに丸池があります。ここは湧き水がたまってできた池で、きれいな エメラルドグリーン色に輝いています。白い大蛇伝説などがあり信仰の対象となっています。「丸池様」とも呼ばれ、魚を捕ったりすることは禁じられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「丸池様」の神秘的な姿に、地区高社研事務局長である興譲館高校の齋藤幸司先生も息を飲んで釘付けになっていました。

 

丸池のすぐそばにある小山崎遺跡は、国内でも希少な縄文時代の低湿地遺跡です。時代は縄文早期(6500年前)から縄文後期(2700年前)までの約4000年間という、縄文時代のかなりの時期について知ることができます。出土品として火焔土器が多く見つかっていますが、これは新潟県などで造られたものが運ばれてきたと考えられています。この遺跡は、縄文海進によって庄内地域がラグーンとなっていた頃の水辺にあるため、遠くの地域からも様々なものが運ばれてきたと考えられています。また、目の前が海、背後の鳥海山からは豊かな湧き水と、生活するには適した地域であったようです。

さらに、この遺跡の住居は山の斜面を削り、造成した平らな床面に住居を建てるという方法をとっています。

 

 

 

 

 

 

 

 


遺跡の傍には鮭のふ化・採捕場があります。  この斜面のすぐ上に造成地があります。

 

B    旧青山本邸

漁業一筋48年。『漁業王』と呼ばれた青山留吉。北海道でのニシン漁で大成功を収めた留吉が、生まれ故郷の遊佐町に造った豪邸です。ここは国指定の重要文化財に指定されています。留吉は24歳の時に単身北海道に渡り、雇漁夫として働き始め、その後漁場を開くと、どんどん成長し道内有数の漁業家になりました。そして、故郷である遊佐に造ったのがこの青山本邸でした。

 

 

 

 

 

 

 

 


立派な門構えで、敷地も非常に広いです。  仏壇の上に神棚という、独特のつくりです。

 

 

 

 

 

 

 

 


天井の白い折鶴は、ハエ対策だそうです。 囲炉裏には、メノウが敷いてありました。

C    大阪有機化学工業株式会社

大阪に本社をもつ企業で、大阪工場・金沢工場とともに化学工業製品・石油化学製品などを製造しています。酒田工場は、2000年に遊佐町で稼働し始めました。遊佐の豊富な湧き水を利用し、主に化粧品材料などを生産しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


               

               構内では、安全のためのヘルメットと安全メガネの着用でした。写真の消防車は万が一のために待機している自前のものだそうです。

 

D    おまけ(その1)

今回の会場となった遊佐町を含む庄内地方は、今年アカデミー賞受賞で話題となった『おくりびと』のロケ地でもあります。巡検のコース途中にも何カ所か発見したので、帰宅途中に寄ってみました。写真は、主人公の本木雅弘さんが、鳥海山を背に河川敷でチェロを奏でるシーンの舞台となった月光川河川敷です。ここには、ちゃんとイスが置いてあって、本木さんの気分を味わえる仕組みになっています。川の反対側ではグラウンドゴルフを楽しむ方々がいらっしゃったり、散歩をしていらっしゃる方もいるような、のんびりした場所でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


E    おまけ(その2)

庄内地方は、強い風が吹くことでも有名です。冬の地吹雪などは交通機関をマヒさせ、生活にも支障を与えます。そしてもう一つ有名なのが「清川だし」と呼ばれる局地風です。最上川に沿って、奥羽山脈から日本海に向かって吹く強風は、農作物の生育や人々の生活に影響を与えてきた。しかし、近年この強風を活かすために、庄内町(旧立川町)に風力発電用の風車が建設された。このことは、NHKで放送されていた「プロジェクトX」でも取り上げられるなど、注目を集めました。

 

 

 

 

 

 

 

 


最上川沿いに風車が並んでおり、この日も全ての風車が勢いよく回っていました。

 

 

 

 

 

最後になりましたが、今回の高社研を担当された飽海地区の先生方、各見学地で案内・説明をして下さった方々、本当にありがとうございました。

 

 

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